宇宙外交
「宇宙開発の成果を用いた外交政策」、また、「宇宙開発のために行う外交政策」のこと。前者については、例えば地球観測衛星の観測データを用いた気候変動対策枠組みへの貢献、後者については例えば国際宇宙ステーション構築のための国際協力、あるいは国産液体燃料ロケットに向けて米国に対して技術移転を認めるよう交渉したことなどが挙げられる。
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もともと、宇宙外交と言えば、「宇宙のための外交」が伝統的であったところ、宇宙開発利用の拡大(通信衛星利用や地球観測などの一般化)に伴い、「宇宙を用いた外交」を指す比重が高まりつつある。
我が国においては、気候変動対策や途上国の防災支援に、温室効果ガス観測衛星「いぶき」をはじめとする地球観測衛星の成果を用いており、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と独立行政法人国際協力機構(JICA)の連携による途上国支援の取組等も進められている。
加えて、外交と安全保障問題は一体不可分であることは論を待たず、例えば、日米同盟に基づき、航空自衛隊宇宙作戦群が米宇宙軍と緊密に関係することも、宇宙外交の一つと言える。
したがって、今日の我が国における宇宙外交とは、国際宇宙ステーションや有人宇宙探査において国際協力を構築するような「外交を通じた宇宙活動の実現(アウトプット)」のみならず、宇宙機ハードウェアのODA輸出や地球観測データを途上国支援に提供すること、国連等の国際場裡においてデブリ対策のルールメイクを主導することで我が国のプレゼンス(影響力)を拡大すること、宇宙空間を新たな作戦領域として自衛隊の宇宙活動能力向上が日米同盟の強化に波及することなど、「宇宙活動の成果として得られた価値(アウトカム)を用いた外交」まで幅広い要素を包含していると言える。
これらの宇宙外交の拡大を反映し、我が国においては、米国と「宇宙に関する包括的日米宇宙対話」を、欧州と「日EU宇宙政策対話」、インドと「日印宇宙対話」といった二国間政府対話を重ねているほか、国際連合(UNOOSA)や主要国首脳会議(G7)をはじめとする多国間枠組みでの宇宙外交の活発化が見られている。