平和利用原則

 「平和利用原則」は、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」(昭和42年条約第19号、いわゆる「宇宙条約」)等を踏まえた日本における宇宙利用の原則。宇宙条約第4条においては、宇宙空間の軍事利用は通常兵器に限り非侵襲の目的であれば、その軍事利用を禁じないものと解釈することが定説であるが、長く我が国においては、更に踏み込んで、宇宙の平和利用とは、「非軍事」の宇宙利用とする前提を採ってきた。

(C)防衛省/内閣府

 〇淵源

 旧宇宙開発事業団法(昭和44年法律第50号)第1条において、「平和の目的に限り」宇宙開発を行う旨が規定されていた。この「平和の目的に限り」について、1669年5月8日の衆議院科学技術振興対策特別委員会において、科学技術庁長官より、「平和の目的に限り」の規定は「非軍事」と解釈する旨、政府答弁がなされた。加えて翌9日には、衆議院本会議において、「我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」が決議され、宇宙開発は「平和の目的に限り」行う旨が確認されている。

 

〇変遷

 1984年に自衛隊が通信衛星さくら2号(CS-2a/CS-2b)の利用を開始するにあたって、公衆電気通信法(昭和28年法律第97号)の「あまねく公平な役務の提供」や「差別的待遇の禁止」を論拠として、自衛隊の通信衛星利用を認める「無差別公平原則」が確立した。加えて、1985年には、海上自衛隊が米海軍のフリーサット衛星の利用を開始することを契機に、自衛隊の宇宙利用について、原子力基本法の解釈を援用し、「その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星」については、「自衛隊による利用が認められる」とする「一般化原則」が確立している。

 

〇専守防衛利用への転換

 2008年には議員立法により、我が国の宇宙開発利用を「日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われ」、「国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資する宇宙開発利用を推進する」旨を掲げた宇宙基本法(平成20年法律第43号)が成立した。法案提出にあたり、提出議員からは、「専守防衛の範囲内で我が国の防衛のために宇宙開発利用を行うこと」は、平和利用原則を求めた昭和44年の「国会決議の文言及び趣旨に反するものではない」旨の説明がなされ、同年12月9日には内閣も、質問主意書に答弁する形で、閣議決定として、これを確認している。


関連:

無差別公平原則

一般化原則(一般化理論)

おすすめ