トラディショナルスペース(オールドスペース/レガシースペース)
「トラディショナルスペース」は、従来の宇宙開発におけるプレイヤー、特に我が国においては、府省及び国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心とする官需を背景に成長してきた宇宙機器製造産業や宇宙利用産業を指す。宇宙政策委員会では「オールドスペース」の用例が見られるほか、民間企業においては「レガシースペース」の用例も確認されている。株式会社日本政策投資銀行が、JAXAの協力を得て作成した資料においては、「トラディショナルスペース」の語が用いられている。
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| (C)NASA |
トラディショナルスペース又はオールドスペース等の語は、新興の宇宙ベンチャーを指す「ニュースペース」との区別の必要から誕生したことは、明白である。そもそもニュースペースが未だ登場しない時代において、従来の宇宙産業を「オールド」として、区別する必要は生起しない。
加えて、「トラディショナル」、「オールド」又は「レガシー」であるからといって、直ちに全てが旧態依然であると捉えることは些か乱暴であり、これら従来プレイヤーに対する慎重かつ丁寧な理解が不可欠である。例えば、従来基幹ロケットを主軸としていた三菱重工業株式会社は、革新的衛星技術実証3号機及び同4号機プロジェクトにおいて、衛星分野に本格進出している。また、株式会社IHIエアロスペースは「トラディショナル」の立場にありつつ、「ニュー」にあたるスペースワン株式会社に出資及びノウハウ提供を行っている。さらには、ニュースペースが興る遥か以前の段階で、川崎重工業株式会社は、測地実験衛星「あじさい」(EGS)の開発を担当するなど、多角化の動きを見せていた。
ニュースペースの勃興を含む宇宙活動の拡大は、トラディショナルスペースにとってもビジネスチャンスであると言え、これまでに蓄積している先行者優位も含め、今日なお、トラディショナルスペースの存在は全く無視できないものと解される。
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