基幹ロケット

 基幹ロケットは、2013年5月に宇宙政策委員会において「安全保障を中心とする政府のミッションを達成するため、国内に保持し輸送システムの自律性を確保する上で不可欠な輸送システム」と定義されたロケットのこと。我が国の宇宙活動においてフラッグシップとして位置付けられる大型ロケットのこと。現在、我が国においては液体燃料ロケットのH3及び固体燃料ロケットのイプシロンロケットがこれに該当する。
 元々、2000年代においては、特にH-2Aロケットを念頭に、「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」(2004年6月9日総合科学技術会議)において、「我が国が必要な時に、独自に宇宙空間に必要な人工衛星を打ち上げる能力を維持することに資するロケット」と定義されていた。なお、同時期の「第3期科学技術基本計画」(2006年3月28日閣議決定)においても、宇宙輸送システム技術は、「国家基幹技術」に位置付けられているほか、2003年の独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)発足時には、ロケット開発を担当する組織に「宇宙基幹システム」の名を冠している。2004年の総合科学技術会議の定義が、宇宙基本計画等にも踏襲されてきたものを、2010年代に入って「国内保持」などの経済安全保障的な観点を交えて再定義したものと言える。
 宇宙開発事業団創設の当時に「人工衛星打上げ用ロケット」、或いはH-2ロケットまでの時代において「国産大型ロケット」や「純国産大型ロケット」として語られてきた「国家的な大規模プロジェクト」としての宇宙輸送システムの開発について、H-2において純国産化を達成した後のH-2Aの時代に、改めて「基幹ロケット」の語によって、その位置付けや意義を定義し、さらにイプシロンロケットやH-3ロケットの開発期に時代に合わせて定義を見直したものと解される。

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