宇宙戦略基金
「宇宙戦略基金」は、2023年に成立した改正国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構法(JAXA法)に基づく、民間企業及び大学等への資金供給を目的とした基金のこと。また、改正JAXA法により実装された国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構の資金配分機能のこと。基金創設からの10年で総額1兆円規模を民間企業等に供給することを目指す。
「基金」は、「複数年度にわたる事務又は事業であって、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であることその他の特段の事情があり、あらかじめ当該複数年度にわたる財源を確保しておくことがその安定的かつ効率的な実施に必要であると認められるもの」(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和三十年政令第二百五十五号))であり、「特定の用途に充てる」ことを目的として、「他の財産と区分して保有する」等、従来のJAXA事業と独立した運用が求められる。
宇宙基本計画(2023年6月13日閣議決定)において、欧米の宇宙開発機関における先行事例を念頭に、「JAXAの戦略的かつ弾力的な資金供給機能を強化」する旨が示され、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(同年11月2日閣議決定)により、JAXAに「10年間の『宇宙戦略基金』を設置」すること、及び「総額10兆円規模の支援を行う」方針が掲げられた。翌年2月には改正JAXA法が施行され、翌月には、総務省、文部科学省及び経済産業省により、令和5年度補正予算に基づく総計3,000億円分の宇宙戦略基金(第一期分)が造成された。
宇宙戦略基金は、内閣府、総務省、文部科学省及び経済産業省が造成及びテーマ(実施方針)を定め、JAXAが委託又は補助金の形態で、日本国内の民間企業又は大学等へ資金供給を行う。府省が定めるテーマは、JAXAを主体とせず、「民間企業・大学等が主体」となるよう設定され、JAXAはステージゲート評価等の技術開発マネジメントを実施する。テーマの性質に応じ、未だ技術成熟度が低いテーマや現時点での採算確保が困難なテーマについてはJAXAからの委託契約の対価として経費を受け取る「委託」、事業化が見込まれるものについては事業化を助成する「補助」の形態が採られる。