「地球環境問題に取り組むための衛星利用に関する日米協力」構想
「地球環境問題に取り組むための衛星利用に関する日米協力」構想は、1989年に当時の海部俊樹内閣総理大臣が、米国のブッシュ(父)大統領に提案を試みたとされる地球観測協力の構想。同年8月から9月の総理訪米に向けて、具体的な「米側への根回し」が進められたものの、ホワイトハウスにおける首脳会談では、環境問題全般について「日米協力を推進していくことにつき意見の一致を見た」に留まり、衛星利用の具体論までは切り出されなかったと見られる。
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1989年7月の第15回先進国首脳会議(アルシュ・サミット)において、環境問題に対するモニターの重要性が見られていたこと、また日米貿易摩擦等を背景に米国に対し、「世界第二位の経済大国であり、また、米国の重要なパートナー」として「立場に相応しい政治的、経済的責任を引き続き負っていく意思」表示が必要とされていたことが、背景にあると見られる。なお、日米構造協議(SII)において、米側から日本側に衛星市場の開放が求められている最中の提案であるが、SIIとこの衛星協力構想との関係は定かではない。
訪米を控えた海部総理から外務省に対し、「地球環境問題に取り組むための衛星利用に関する日米協力」の言及がなされたことが端緒とされる。これを受け、外務省では「関係省庁と協議」の上、経済局より在米日本大使館に「米側の根回し」を行うよう訓令を発出した。
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在米日本大使館側では、谷内正太郎参事官(当時)を中心として、国務省及び米国航空宇宙局に衛星協力を打診したと見られる。米側は事前情報に謝意と、「特に問題ない」との感触を示した。
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最終的には、海部総理の「トーキングポインツ」にも、人工衛星による二酸化炭素、オゾン及び熱帯雨林の観測につき、日米協力の推進を打診する旨が盛り込まれたものの、実際の首脳会談での踏み込んだやりとりは確認されていない。
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