一般化原則(一般化理論)

 「一般化原則」又は「一般化理論」は、宇宙基本法(平成20年法律第43号)施行以前における自衛隊の宇宙利用の在り方を示す概念。国会決議に基づく宇宙開発の「平和利用原則」は、特定の宇宙技術の一般化の途上段階における制約を趣旨としており、それが一般化した場合には自衛隊に対して使用を制限する合理性を失う、とする理論。内閣の見解として、「その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星」については、「自衛隊による利用が認められる」とした。長く、「平和利用原則」の下、「非軍事」の宇宙利用を前提としてきた我が国において、自衛隊が宇宙利用を行う論拠の一つとされていた。

 1669年5月9日の衆議院本会議において、「我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」が決議され、宇宙開発は「平和の目的に限り」行う旨が決議されており、この「平和の目的に限り」とは「非軍事」を意味する解釈が確立していた。その後、海上自衛隊が米海軍のフリーサット衛星を利用することを契機に、国会決議における平和利用原則との整合が焦点となり、1985年2月6日の衆議院予算委員会において、内閣の見解として「国会決議の『平和の目的』に限りとは、自衛隊が衛星を直接、殺傷力、破壊力として利用することを認めないことはいうまでもな」く、「その利用が一般化しない段階における自衛隊による衛星の利用を制約する趣旨」とし、「その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星」は、「自衛隊による利用が認められるもの」とする解釈が成立した。

 一般化原則は、内閣法制局、防衛庁及び科学技術庁が主導して取りまとめられたが、その際に参考とされたのが、1965年4月14日の衆議院科学技術振興対策特別委員会において科学技術庁長官が答弁した原子力分野における「船舶の推進力としての原子力利用が一般化していない現状においては」「自衛艦の推進力として使用」することは「認められない」(反対解釈として、船舶の推進力として原子力利用が一般化された暁には自衛艦もこれを利用することが当然に認められ得る)とした、原子力分野における「一般化理論」(「普遍性理論」又は「一般利用普通化の原則」)である。原子力基本法を主導した、中曽根康弘は、1984年3月28日の参議院予算委員会において、「そういう原子力基本法の説明をして、それで通っておるのです。今の、しかし人工衛星の問題はそういう説明をそのときしていないんです」として、原子力分野における一般化原則を宇宙分野に援用することに対して否定的な答弁を行った一方、後年には回顧録において「軍事用の潜水艦に」原子力を「使ってもいいという解釈を残しておいたわけです。この一般利用普通化の原則は、その宇宙開発にも平和利用の原則に援用されて、自衛隊の衛星利用となる」と回顧している。結果的には、1965年の原子力の「一般利用普通化の原則」から遅れること20年を要した上で、「原子力分野における解釈を援用した宇宙分野における一般化原則」を、原子力のそれと同様に内閣から国会に対する答弁の形で、確立したと言える。

 なお、自衛隊においては、一般化原則の成立以前に、公衆電気通信法(昭和28年法律第97号)の「あまねく公平な役務の提供」や「差別的待遇の禁止」に基づく、「無差別公平原則」により商用通信衛星等の利用を可能としている。


関連:

平和利用原則

無差別公平原則

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